筋肉は骨の形を変えるのか?
昔から筋肉が生み出す力は骨の形を変えることが知られておりFrostの『メカノスタット理論(mechanostat theory)』[3]と呼ばれています。私は歯並びだけでなく顔とスマイルを整える治療をしている矯正専門医ですのでこの理論を最大限に臨床にも応用しています。最近は矯正歯科領域では筋肉が骨を変えることを意味して『マッスルウィンズ(muscle wins)』として知られています。この筋肉が骨の形を変えるという現象は整形外科の先生がよくご存じかと思いますので私の治療もそれを応用したものだと容易に理解できると思います。
筋肉は骨の形を変える
矯正歯科では歯に力をかけて動かすのですが歯だけでなく歯槽骨や付着している歯肉、線維、血管などすべて変わるため力に適応することを応用した治療そのものです。顔には咀嚼筋や表情筋、SMASなどの筋膜、腱組織などが顔面や顎の骨に機械的な刺激を与えて顔の形を変えていきます。
骨粗鬆症への応用
成長期はもちろん筋肉の力のかかり方しだいで大人でも骨や関節の形が年単位で変化します。高齢になり更年期も終わって老年期に入ると骨粗鬆症(Osteoporosis)が問題になってきます。人間は二足歩行の動物ですので大腿骨骨折のリスクを負って進化したたため骨粗鬆症で骨量が減っていくことを避けることが必要です。
メカノスタット理論から言えば筋肉が収縮すると骨にもその力を支えるための骨量の変化があるはずです。ネズミを用いた実験では神経を切断して筋に力を入らなくさせ、電気刺激で筋肉に刺激を与えたところ骨量の回復と筋委縮の改善を得ることができたという報告もあります[1]。
筋肉・骨のクロストーク
最近では『Bone-Muscle crosstalk』といって筋からの力学的シグナルだけでなく筋肉と骨相互に成長因子(GF)などの信号を送りあっていることも明らかになってきています[2]。例えば骨粗鬆症を薬で改善すると筋肉量が増えるということも考えられると思います。
まとめると、筋肉は骨を変える力があり、矯正治療だけでなく骨粗鬆症の治療にも応用が利く人体のしくみだということ、また、筋肉からの直接的な力だけでなく骨と筋は相互に成長因子などの内分泌で影響しあっているということです。
参考文献: