工藤淳夫

発音の老化とトレーニング法について

発音の老化

 

私は口腔、顎、顔など見た目と機能の老化と歯科矯正治療のエキスパートでもあるので、今回は発音の老化とその予防、トレーニングによる回復法について考察してみたいと思います。

 

発音にも老化現象がみられる

老化してくると呼吸機能の低下とともに発声時間も短くなり[1]、舌や唇の筋肉の力や持久力の低下が認められます[2]。声を出す声帯の筋繊維も萎縮し[7]ますので声帯が閉じにくくなる原因と考えられます。死亡原因の第3位となっている誤嚥性肺炎は気道に食塊が流れ込んでしまうことで肺炎になるのですが、健常な人は嚥下時に喉頭蓋とともに声帯が閉鎖するため[8]、高齢者における声帯の筋力の低下も原因の一つと考えられます。全身的にも筋量が減っていくため口腔や表情筋、呼吸筋などの筋力が衰えることは想像に難くないでしょう。

嚥下時には高齢者は若年者よりより強く舌を押し付けて嚥下することが知られており[3]ますが、他の機能低下を補うための補償なのかと推測します。

発音に関して、加齢とともに言葉が遅くなるだけでなく発音が不明瞭になっていきます[4]。この原因でもっとも大きいのが唇の筋力、つまり口輪筋の衰えです[4]。そのため発音の老化を客観的に知るためにパ行などの唇で出す発音やタ行などの舌を押し付けて発生させる音、カ行などの舌根と軟口蓋で出す発音がどのくらいの速度で発声できるかを測ればいいことになります。そのような検査法に『オーラル・ディアドコキネシス検査』というものがあり、パやタなどの発音を1秒間に4回以上高速で発音できればほぼ正常とされています[5]。先ほど述べたように発音の老化の原因で最も主要なのが唇の口輪筋の衰えなわけですからパ行が最も老化度を反映していると考えられます。

 

老化防止のための発音トレーニング法

パ行をはじめ、タ行やカ行の発声練習法にはさまざまありますが、面白いと思った練習法を紹介します。青森県総合学校教育センター様で使われている練習法を参考にしました[6]。その中ではパ行の訓練法として破裂音であることを利用してロウソクの火を消すトレーニング法があり面白いと思いました。タ行のトレーニング法では手のひらにウェハースや銀紙片を載せて吹き飛ばすという練習法も面白いのではないかと思いました。カ行においては、うがいの練習が舌根と軟口蓋を閉鎖する筋トレとなるため有効としています。

鍛えるとともにリラックスさせることも発音トレーニングに欠かせません。舌や咽頭、喉頭の緊張をほどく方法としてあくびやため息をしながら声を出す方法があります[9]。唇の筋肉をリラックスさせる方法にはリップトリルというトレーニング法が声楽で使われています。

 

口元の突出や開咬では口輪筋が弱い~正しい表情筋トレーニング法

このように発音にも老化現象があるということが分かったかと思います。70歳くらいの高齢者の口輪筋は400~500ml程度の水を重力に任せて唇で支えられない筋力である[11]ため40代50代の人がこれを下回ったら口輪筋が老化していると考えられます。

最も影響の高い口輪筋の老化対策のトレーニングで私が臨床で教えているのはボタンプルという伝統的な方法ですがこれが最も効果が高いと感じます。また、口輪筋が弱いタイプの歯並びもあって口元が出ている咬み合わせやオープンバイト(開咬)の矯正治療では口輪筋のトレーニングも強くお勧めしています。このボタンプル法は同時に表情筋トレーニングとなっているため口元や頬、目の周囲の筋にも影響を与えます。私の臨床経験ではハリと艶、目がぱっちりしてくるなどの変化が明らかです。ボタンプルと同じトレーニング法としてペットボトルに水を入れてボタンの先にぶら下げて5秒やって5秒休むという筋トレがあります。有酸素運動は最大負荷の50%で約20回、無酸素運動をするなら80%程度の負荷で5回程度行う[10]ことをお勧めしています。継続的に4週間トレーニングすることでハリや艶、目がぱっちりするといった表情筋の強化に伴う顔の変化が見られます。

 

まとめると、発音にも老化があり口輪筋が最も影響している。トレーニング法にはさまざまあるが自分が面白い、続けられそうな方法で継続することが発音の老化防止に有効と考えられます。

 

参考文献:

  1. The Aging Voice: Influence of Respiratory and Laryngeal Changes. Vaca M et al., Otolaryngol Head Neck Surg. 2015 Sep;153(3):409-13. doi: 10.1177/0194599815592373. Epub 2015 Jul 8.

  2. Differences in maximal isometric tongue strength and endurance of healthy young vs. older adults. Oh DH et al., J Phys Ther Sci. 2016 Mar;28(3):854-6. doi: 10.1589/jpts.28.854. Epub 2016 Mar 31.

  3. Comparison of maximal tongue strength and tongue strength used during swallowing in relation to age in healthy adults. Park JS et al., J Phys Ther Sci. 2016 Jan;28(2):442-5. doi: 10.1589/jpts.28.442. Epub 2016 Feb 29.

  4. Age Differences in Sequential Speech Production: Articulatory and Physiological Factors. Bilodeau-Mercure M et al., J Am Geriatr Soc. 2016 Nov;64(11):e177-e182. doi: 10.1111/jgs.14491. Epub 2016 Oct 26.

  5. オーラル・ディアドコキネシス検査 http://www.takei-si.co.jp/productinfo/detail/pdf/kijyun.pdf
  6. パ行、タ行、カ行の発声練習法 青森県総合学校教育センター http://ts.edu-c.pref.aomori.jp/?action=common_download_main&upload_id=833
  7. Aging voice and the laryngeal muscle atrophy. Martins RH et al., Laryngoscope. 2015 Nov;125(11):2518-21. doi: 10.1002/lary.25398. Epub 2015 Jul 7.

  8. 摂食・嚥下のメカニズムと病態 東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 https://radiology.bayer.jp/static/pdf/publications/nichidoku_iho/2001_46_01/46_01_02.pdf
  9. A critical view of the yawn-sigh as a voice therapy technique. Boone DR et al., J Voice. 1993 Mar;7(1):75-80.

  10. 口唇閉鎖不全の患者に対する対処法について 飯田順一郎 et al. https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/60938/1/36-02_01_iida.pdf
  11. 高齢者の口輪筋力 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikahozon/57/2/57_180/_pdf
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