大豆はアンチエイジングに良い?大豆のリスクとメリット
豆乳や豆腐、枝豆など日本人の食事には大豆が多く使われています。
大豆にはダイゼインやゲニステインなどの植物性エストロゲンであるイソフラボンが豊富に含まれていて女性ホルモンのエストロゲン受容体と結合するため特に閉経後の女性のアンチエイジングに役立ちます。
しかし私はリアルの現場で働く医療人で常にリスクとメリットを比べる科学的思考で臨床治療を行っているためいい面だけでなく必ずその悪い面(リスク)を考えます。
イソフラボンは食事から取り込む女性ホルモン様物質でいわゆる『環境ホルモン』です。ダイオキシンやビスフェノールAなどと同様そのリスクについてもアンチエイジング的にマイナス面がないかどうか検討する必要があります。
私は2011年にクリニックを開業して以来ピンクリボン運動に賛同して寄稿したり寄付を行ってきましたので環境ホルモンの乳がんへの害は避けてもらいたいとの想いがあります。
長期に生活習慣として老化を加速させる食べ物を摂取することはスキンケアにおける合成界面活性剤の使用や糖質摂取でも解説してきたようにさまざまな生活習慣病の原因となります。
目次
エストロゲン受容体の2つの作用
エストロゲン受容体にはαとβの2つがあって全く逆の働きをします。
エストロゲン受容体αは細胞増殖の効果があるため肌のターンオーバーの正常化など組織の修復に効果があります。エストロゲン受容体βはアポトーシス(細胞の自殺)を引き起こし細胞数を減らす作用があります。
イソフラボンはαと結合する力が弱くβと結合する力が強いという特徴があります。このようにイソフラボンは逆の作用を同時に持っているため乳がんを促進することも抑制することもあるのです。
大豆の良い効果
それでは大豆製品の良い面を見ていきましょう。
閉経後の女性の乳がんへの効果
- 閉経後の女性の乳がんリスクを下げる[1]
- 短期(84日)ならば高用量でも安全に使用できる[3]
これらの効果は地域差があります。特にアジア圏の人たちは大豆を多く摂取することやエクオールに変換する腸内細菌が50%の人に存在しており西洋人より効果が現れやすいためです。
閉経後の女性の骨粗鬆症への効果
- 閉経後の女性の骨粗鬆症のリスクを下げる[1]
- 骨密度を増やし、骨吸収を減らす。
骨粗鬆症は骨が吸収されて無くなる速度が骨を作る速度より速くなるため骨がスカスカになります。閉経後に減少した女性ホルモンをイソフラボンで補給することでこのバランスを改善しているのです。
閉経後の女性の脳機能への効果
- 閉経後の女性の学習と記憶能力を改善する[1]
脳にもエストロゲンが作用する受容体が豊富にあります。
肌のアンチエイジングの効果
- 肌の紫外線による肌の老化から守る作用[1]
イソフラボンは大豆からとれるポリフェノールであり抗炎症、抗酸化作用があるため紫外線Bによる表皮細胞のDNAダメージと活性酸素発生を抑制して年齢以上の肌の老化を予防しています。
その他の効果
- 低用量で血管を守る働きがある[2]
- AGA(いわゆる男性型若はげ・薄毛)への効果[5]
- 前立腺がんの予防効果[6]
この男性型脱毛症(AGA)の抑制効果や前立腺がんの予防効果はプロペシアなどのフィナステリドと似ています。フィナステリドは男性ホルモンをDHTに変換する酵素(5αリダクターゼ)を阻害して薄毛を防いでいます。
私ははげるのが嫌だったので4年程度飲み続けていますがまず抜け毛が減りましたし同僚(お世辞を言わない)からも髪が増えたと言われますので増えていると思います。フィナステリドには核異形成度の低い前立腺がんの予防にも効果があります[6]。
大豆の悪い作用
次に大豆の悪い面を見ていきましょう。
子供の成長発達阻害
- 乳幼児からイソフラボンを摂取すると成長発達のリスク[1]
大豆由来の赤ちゃん用ミルクも売られていますが、正常範囲の健康な赤ちゃんであれば成長期にイソフラボンなどホルモン作用のある物質の摂取はやめた方がいいです。女性ホルモンが早期に出すぎると身長が低いまま止まり乳腺など2次性徴の過剰な発達が起こります。
乳がんリスク
- エストロゲンに敏感に反応するタイプの乳がんへのリスク[1]
- 長期の摂取で乳がんの成長を促進する[2]
- 大量に摂取するとHER-2陽性の乳がんタイプでは再発リスク[2]
イソフラボンは乳がんへの影響があるため乳がん細胞がある方、特にエストロゲンに敏感なタイプの癌やHER-2陽性のタイプの癌では大豆を食べるのは避けた方がよいと思います。
川崎病のリスク
長期のイソフラボン摂取で川崎病の病因となる[2]
生活習慣病は今まで気づかなかった原因であることが多く目から鱗が落ちます。
免疫力低下のリスク
大量にイソフラボンを摂取すると胸腺が萎縮して免疫力が落ちる[2]
サプリメントなどで大量に摂取すると正常なホルモンバランスを持っている方にとっては免疫力が下がる食べ物に変わってしまいます。
子孫の生殖器異常のリスク
大量摂取で子供の生殖器変異や精子変異のリスク[2]
これと同様のことが魚や貝では奇形が見られています[7]。湾など水の出入りが少ないところには環境ホルモンが溜まりやすいからです。
大豆レクチンやモルヒネ様作用のリスク
大豆のレクチンである大豆アグルチニンは消化管上皮細胞が互いに結合してバリア機能を保っているタイトジャンクションを緩め細菌や毒素、未消化の栄養素が腸から体内に入り込みやすくなります[4]。
体内に入ると免疫反応がおこり異物を排除するため炎症が起こりますので活性酸素も出ます。
顔の老化を年齢以上に促進したくなかったら不要な活性酸素レベルは低くしたいものです。
また腸内でモルヒネ用物質のソイモルフィンに変わり脳に悪影響を及ばします。
これは麦のグルテンなどのレクチンと同様の効果があり、アレルギー源になりやすいだけでなく脳のパフォーマンスや仕事のパフォーマンスにも良い影響は与えないため私は基本的に豆類は積極的には摂取しません。
その他のリスク
大量摂取で血管ダメージのリスク[2]
大量摂取で活性酸素発生のリスク[2]
大量摂取は健常人にとっていいことはないですね。特にイソフラボンも含めた環境ホルモンには慎重になったほうが良いです。
まとめ
一般的に、生活習慣としての大豆食品の摂取は『乳がんが無い閉経後の女性』には低リスクで良い効果が期待できると言える。健常な方は大豆のどのメリットを期待するかによって摂取するとよい。個人的には脳のパフォーマンスを考えて豆類は積極的には食べないようにしている。食べる場合にはイソフラボンの乳がんへの悪影響など重大なリスクも考慮して自分で大豆製品を選択して食べることが重要。また、大量摂取はやめた方が良い。
参考文献:
- Soy isoflavone: The multipurpose phytochemical (Review). QINGLU WANG et al., Biomed Rep. 2013 Sep; 1(5): 697–701. Published online 2013 Jun 3.
- Isoflavones: Anti-Inflammatory Benefit and Possible Caveats. Jie Yu et al., Nutrients. 2016 Jun; 8(6): 361. Published online 2016 Jun 10.
- Effects of a high daily dose of soy isoflavones on DNA damage, apoptosis and estrogenic outcomes in healthy, postmenopausal women – a Phase I clinical trial. Elena A. Pop et al., Menopause. 2008; 15(4 Pt 1): 684–692.
- Effects of Soybean Agglutinin on Mechanical Barrier Function and Tight Junction Protein Expression in Intestinal Epithelial Cells from Piglets Li Pan et al., Int J Mol Sci. 2013 Nov; 14(11): 21689–21704. Published online 2013 Nov 1.
- Androgenic alopecia is associated with less dietary soy, lower [corrected] blood vanadium and rs1160312 1 polymorphism in Taiwanese communities. Lai CH et al., PLoS One. 2013 Dec 30;8(12):e79789.
-
High-grade prostate cancer and finasteride. Lebdai S et al., BJU Int. 2010 Feb;105(4):456-9.
- 環境ホルモンが野生生物へ及ぼす影響の事例 東京都環境局