工藤淳夫

分裂しなくなった老化細胞は老化を加速させる

cell

よく活性酸素は老化の原因と言われますが活性酸素はDNAを傷つけ細胞周期を停止させます。細胞周期が停止すると分裂しなくなります。老化した細胞もいつかは細胞分裂しなくなりますが、分裂能を失った後の細胞はどうなるのだろうという興味がわきましたので医学論文で調べてみました。

最初にまとめてしまいますが、老化しきって細胞分裂しなくなった幹細胞や前駆細胞がまだ分裂能がある健常な細胞までも老化させるという内容になります。

 

活性酸素は幹細胞のDNAに傷をつけ細胞周期を止める

まず活性酸素(ROS)は加齢とともにミトコンドリアの機能が衰えたり、SODやグルタチオンなどの抗酸化物質のネットワーク(レドックス機構)が働かなくなってくると増えるわけです。一般に活性酸素が細胞質やミトコンドリアに増えてくるとDNAにダメージを与えこの傷が修復されるまでp53やp16というがん抑制遺伝子と呼ばれる遺伝子が活性化されて細胞分裂の周期をストップします[2]。

傷が修復されて細胞を増やしてもOKと判断すれば再度細胞分裂の周期に戻りますが、永遠に戻らないこともあります[1]。これは通常の老化現象と完全に一致しているため活性酸素による年齢以上の細胞老化が促進されたと言い換えることができるのです。紫外線しかり、排気ガス中の酸化金属しかり、タバコや肥満、歯周病などの慢性炎症も活性酸素を放出していますので老化が加速していると言えるでしょう。

 

細胞周期が永久に止まると老化促進物質を出すようになる

下の図は永久に細胞分裂しなくなった細胞は通常の細胞と異なりSASP( senescence-associated secretory phenotype)という炎症性サイトカインやMMPなどのプロテアーゼなどの老化促進物質を放出することを表したシェーマです[1]。

細胞分裂しなくなった細胞は老化促進物質を放出する Rodier F et al.[1]

この図によれば、SASPは老化促進だけでなくガンの発生や一時的な組織回復が起こることを示しています。ガン細胞の発生が加齢とともに増えてくる一因がこの分裂しなくなった老化細胞が増えてSASPが周囲の細胞に悪影響を与えるからと考えられます。

 

mTORを抑制すると老化細胞による老化の加速を緩和できる

このSASPを発する老化細胞による健常な細胞へのエイジング促進作用を緩和する物質も報告されています。それが長寿薬剤として有名なラパマイシンです[3]。ラパマイシンに関しては以前単体で記事を書いていますのでよかったらこちらも読んでみてください。

老化を抑制する可能性のあるラパマイシン

このラパマイシンはmTORというたんぱく質を抑制する薬剤です。mTORは糖質やタンパク質の摂取が減った飢餓状態で抑制されるとオートファジーを起こして長寿になるタンパク質で微量の摂取で糖尿病薬のメトフォルミンと同様長寿効果に期待がかけられています。メトフォルミンの方は現在アメリカで長寿効果を確かめるための大規模実験中で結果が楽しみです。ラパマイシンはメトフォルミンより効果が高いことが知られていますが、もともと移植時の免疫抑制剤として使われてきた経緯があるため二の足を踏みがちになるもの分かります。ラパマイシンの微量摂取の長寿効果もこれからの実験待ちといえるでしょう。

 

まとめると、紫外線や大気中の酸化金属、タバコや合成界面活性剤などの毒物から発生する活性酸素に幹細胞が触れるとDNAがダメージを受け細胞分裂を停止する。一時的な停止ではなく永久に停止するとまさに老化細胞となり周囲にSASPという炎症やプロテアーゼをばらまくようになるため周囲の細胞も同様に老化してくる。SASPを緩和するにはmTORを抑制することでラパマイシンやメトフォルミンなどの薬剤が有効であることが示唆されているということです。

 

参考文献

  1. Four faces of cellular senescence. Rodier F et al., J Cell Biol. 2011 Feb 21;192(4):547-56. doi: 10.1083/jcb.201009094. Epub 2011 Feb 14.

  2. Oncogenic ras provokes premature cell senescence associated with accumulation of p53 and p16INK4a. Serrano M et al., Cell. 1997 Mar 7;88(5):593-602.

  3. MTOR regulates the pro-tumorigenic senescence-associated secretory phenotype by promoting IL1A translation. Laberge RM et al., Nat Cell Biol. 2015 Aug;17(8):1049-61. doi: 10.1038/ncb3195. Epub 2015 Jul 6.

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